アニメ化決定記念!岡本信彦&早見沙織 主演キャストインタビュー

斉藤ゆうによる漫画『疑似ハーレム』が、ついにTVアニメ化決定! 本作は、ハーレムに憧れる演劇部・大道具担当の先輩・北浜瑛二と演劇部のホープとして期待される七倉凛のラブコメディ。

ツンデレちゃん、小悪魔ちゃん、甘えんぼちゃん、クールちゃん、おしとやかちゃんなど、キャラクターを演じることで想いを寄せる瑛二のささやかな夢を叶えながら二人の時間を楽しみます。ついつい役を演じてしまう凛は、果たしてありのままに好意を伝えられるのでしょうか。

本稿では、北浜瑛二役の岡本信彦さんと七倉 凛役の早見沙織さんの対談インタビューをお届けします! 演技しているキャラを演じる難しさやアニメとお芝居の現実味とデフォルメ感など、早見さんは迷ったことが多かったよう。さらに、岡本さん一押しの凛のキャラと魅力について語っていただきました。

幸せな読後感でほんわかとする作品

――原作の漫画や台本をご覧になった感想はいかがでしたか?

早見:原作を読んでキュンとしましたし、おふたりのやりとりが微笑ましくて、優しい気持ちになれました。幸せな読後感でほんわかします。

岡本:台本を読んだ時に、ふたり(瑛二と凛)でずっと話していたのが印象的でした。普段は一通り読んでから自分の部分を読み込むのですが、今回はしっかりと見る台詞が全編なのでチェックが3倍ほどかかりました(笑)。

早見:わかります(笑)。

岡本:通常1時間ほどでチェックし終わりますが、今回は思った以上にボリュームが多くて。第1話の台本から、テンポの良い会話劇を菊池監督が作りたいんだろうなと感じました。

――おふたりはメインキャラクターを多く演じられていますが、その中でも本作では準備時間を長く取られたんですね。

岡本:アニメ1本25分で自分の部分を繰り返し見ても、20ワード程度なら30〜40分程で終わりますが、今回は全編話しているので100ワードくらいありました。3回見返しただけで1時間半、4回見たら2時間を超えてしまいます(笑)。
最初は会話のテンポが早いことに驚いて何度もシークバーを戻して、表情とかを見返しました。

――通常時でも声優さんの台本はたくさん書き込まれているイメージですが、早見さん「台本がすごいことになっている」とコメントされていました。どのようなことが書き込まれているのでしょうか?

早見:凛、小悪魔な凛、ツンデレ凛、甘えんぼ凛、クール凛……と台本に印刷されている段階から色んな凛が書いてあって混乱しました。
 私はそもそもあまり書き込まないタイプなのですが、特に今回は書き込んでしまうとわかりづらくなるので、必要最低限にしています。

――凛はコロコロと表情など変化しますが、どのようにチェンジされましたか?

早見:絵にも助けられていて、イラストが変わることで変化していました。

――イラストは、アフレコ時に完成していないことが多いと思いますが、原作をご覧になったり?

早見:原作の絵も見ますが、アニメだと時間軸が変化しているので、その関係性も踏まえて台本に忠実になるよう表現しています。物語の流れに沿った関係地を意識しました。

――役に決まった時のお気持ちを教えてください。

岡本:実は今回オーディションではなく、前にCV部(※)で少しだけ声を担当していたままのキャスティングでアニメ化しました。けれど、個人的には前よりイチャイチャへと変化したかなと思います。(笑)。

 ※脚注:2019年に公開されたYouTubeでの動画企画

早見:前は短い動画で掛け合いは録れなかったので。アニメでは、より会話劇だなと感じました。

岡本:CV部で他の動画も録りましたが、今回『疑似ハーレム』のお話をいただいたのは刺さったからかな? と思っています。早見大先生のお陰です!

早見:こちらこそです!

――動画は約3年前となりますが、改めて掛け合いを収録した印象はいかがですか?

早見:ずっと岡本さんのお声で(瑛二を)再生していました。瑛二と凛の会話がずっと続くので、岡本さんなくしてはお芝居が成立しないんです。ひとりで収録していたら、テニスの壁打ち練習しているような感覚になっていただろうなと。お互いに台詞の返しを聞き合ってできるのが会話劇だなとアフレコで感じました。

岡本:僕もベースは動画と同じですが、掛け合うことでより(瑛二が)多角的になったと思います。早見さんが言っていた通り、台詞の返しや答えでより立体化しました。第1話でだいぶ演技の答えが見えて話が繋がり、ひとりの人間が出来上がりましたね。

――アフレコでキャラクター性が形成されたのですね。

岡本:僕は引っ張ってもらった感覚が強いです。

早見:私もです。

「瑛二がちょっとおバカなくらいが凛の魅力を引き出せる」

――アニメ化発表時に岡本さんのコメントにて「凛の魅力を最大限引き出せるように」とありましたが、どのように凛の演技やかわいらしさを引き出しましたか?

岡本:個人的には瑛二が天然であればあるほど、凛がもっと演じてくれるのかなと(笑)。瑛二がちょっとおバカなくらいが凛の魅力を引き出せるかと思っています。
 でもそんな必要もないほど、早見さんがしっかりとキャラ分けしてくださっています。他のアニメでこんな早見さんの声は聞けないですから! 現場でも「甘えんぼちゃんとか演じる機会あるんですか?」って聞いたら「ないですね」と話しましたね(笑)。

早見:やらないですし、難しかったですね。

岡本:甘えんぼちゃんとかの萌え系の声を聞いたことがないので、驚きました。元々地声が高い方が萌えアニメの声を担当することが多いですし、早見さんは透明感のある役とかお淑やかで強い女性のキャラクターのイメージなので、レアな引き出しを聞けて得した気分になって、凛ちゃんを拝んでました(笑)。

――まさに瑛二のようです(笑)。小悪魔、ツンデレ、甘えんぼ、クール、生徒会系などと凛が様々なキャラを演じますが、どのように演じ分けましたか?

早見:お芝居しながらだんだん作りました。属性で呼ばれていると、「アニメならこの属性はこんな喋り方をする」という皆さんの印象があるので、特性を踏襲した方が伝わりやすいと思います。
 けれど、声優部ではなく演劇部ですから、凛ちゃんは体の動きや髪型など見た目を変えるのも演技の要素として取り入れていて。ツインテールしたりメガネかけたりもしますし。
 凛ちゃん本人が演じている役の分け方を考えて「あからさまに声だけ変えるのも違うのかな?」と思ったり、皆さんが想像するティピカルな像が出てきた方がアニメ的にわかりやすいのかなとか……。そういった難しさがありました。
 凛ちゃんの恥ずかしさや先輩をからかう心が小悪魔やツンデレになっているので、定型を意識しすぎると凛ちゃんの心とリンクしなくなるかもとか。もう頭で考えすぎて「お芝居ってどうするんだろう?」と悩み、岡本さんにも相談しました。
 あと、会話は自然さがベースにありつつ、日常とは違う会話が絶妙に不思議なのですが、その違和感をなくすのも難しくて(笑)。

岡本:難しい題材ですよね。顔がアニメチックならアニメ声の方がマッチしますが、それ以外は青春の1ページですし。

早見:アニメになる以上何が自然なのかは疑問ですが、会話の自然さはアニメベースではない方が自然に聞こえたりします。今から放送されるのがドキドキで怖いですね(笑)。

――早見さんでもそんなにドキドキされているんですね。そもそも、キャラを演じている凛を早見さんが演じるという時点で、二重で演技されているので難易度がかなり高いですよね。

早見:そうなんですよ! 高校生の演劇部で、凛ちゃんはどんな風にお芝居するんだろう?と考えた時、根っこには凛ちゃんが存在しているのを意識しました。
 自分の感覚の中でふんわりと(凛を)イメージしておいて、現場で岡本さんとの掛け合うことで引き出されたり、音響監督・佐藤卓哉さんのディレクションを受けてだんだんと作られていきました。

――先ほど早見さんは岡本さんに相談されたとのことですが、その時はどのようなお話をしました?

岡本:今までやってきたアニメや朗読劇など全ジャンルのお芝居とは違うものを求められる作品だと思います。作品への理解と感覚だけで戦おうとすると矛盾が生じそうです。
 個人的には、役を演じている凛と瑛二のやりとりがそもそもなぜ成立しているのかが疑問でして(笑)。

早見:岡本さんは根本から考えられてました。

岡本:しかも高校生の頃は多感な時期なので、僕なら恥ずかしいです(笑)。(瑛二は)結構パーソナルスペースに入っていけるタイプで、僕とはまるで違う男だなと羨ましくなります。でも瑛二は凛ちゃんのファン1号のような感覚で心の底から楽しんで喜んでいますから、存在するデフォルメ感と自然さをずっと手繰るように探しました。

――悩まれながらも様々な凛を生み出された様子を間近で見ていた岡本さんは、どの凛がお好きですか?

岡本:全部好きですが、甘えんぼはいつもと違う早見さんなので好きですね。クールは早見さんらしさも感じられますが、甘えんぼは少し舌足らずな感じです。幼女も聞いたこともないし……。

早見:王子様もやったな〜。1話だけしか登場しない子もいるので混乱しちゃいます。

岡本:別でギャラをお支払いした方が良いなと思うほど、早見さんの幅広い演技がすごかったです。早見さんのファンの方は絶対感謝すると思います(笑)。

――早見さんの中で、演じやすい、演じづらい凛はありますか?

早見:子ども役を演じる機会はありますが……。甘えんぼちゃんは“甘えん坊”に特化しなきゃいけないですし、自分の声の響き的にも分からないから(監督に)聞いてもらいつつ、修正しようというスタンスで練習していました。
 どのキャラにも愛着があるので、凛ちゃんの気持ちがよく分かります。始まる前は属性の子と距離が遠い感じがありましたが、収録していくと親近感が湧いてだんだんと馴染むようになって、話数が進むとより楽しめるようになりました。

――話数が進むごとに戸惑いがなくなるのは、凛と同じですね。会話の中でもキャラの特性をいかした場面で登場するようになりますし。

早見:そうですね。凛ちゃんが役を楽しんでいるんだろうなと感じます。凛ちゃんらしい要素が含まれていてかわいいなと思います。

学園ラブコメだけどハーレムを演じるのはファンタジー

――役との会話を楽しむ凛と瑛二ですが、時々本音が垣間見える瞬間があります。そんな本音はどのように表現しましたか?

岡本:瑛二は喋らなくなったら本音な感じがします。今まで楽しそうに会話のラリーを続けていたのに、急に意識しちゃって全然話せなくなるみたいな。振り返ってみると、本音が見える時だけ、僕が思う人らしい感覚になるなと思います。

早見:たしかに学園ものですが、ちょっとファンタジーの要素がありますね。

岡本:こんなに良い子(凛)が、なぜ瑛二を好きなのか疑問に思っちゃいます(笑)。

早見:優しくて良い先輩ですよ!

――瑛二は格好付けている時と素で格好良いことを言っている時がありますが、素で格好良いことを自然に言ってしまうから凛も好きなのかな?と思います。

早見:たしかに!

岡本:格好良い本音は、本心だからストレートにサラッと言っていると思います。格好付けているところは、鼻にかけてみたり、息を多くしてみたりしました。

早見:ディレクションでも「格好付けてください」と言われてました。

岡本:早見さんが言うように、アニメらしいテンションの方が合うかなと悩みました。都度、やりつつ調整しました。

早見:録ってる時の会話のテンポに合わせました。色々な凛を意識しているといっぱいいっぱいになっていたのを、岡本さんと瑛二先輩が台本の差引や間をさりげなく回収してくれました。ずっと感謝しています。

岡本:僕もです。喋ってないところでもキャラクターとして掛け合っていると、自然に戸惑いの息とかが出るのかなとお互いに埋められたと思います。

――おふたりとも息ピッタリですね。凛の本音はどのように表現しましたか?

早見:本音をまっすぐ伝えるのが恥ずかしい時に、役を通して伝えている場面もあります。本当に好きな気持ちや照れが上回ると、隠しきれなくてお芝居できなくなってしまうのがかわいいなと思います。

――照れている凛はかわいいですよね。妹の綾香とのやりとりもかわいらしいのですが、瑛二は凛と綾香で話し方を変えていますか?

岡本:凛ちゃんか凛ちゃん以外かで自然と話し方は変わっています。あと小さい子(綾香は小学1年生)への話し方にしています。

一番気になるのは、凛ちゃんの電話に妹が出て判別できずに話している瑛二に驚きました(笑)。

――まさか気が付かないという(笑)。かけ合っているおふたりだからこそ感じるお互いの役の魅力を教えてください。

岡本:凛ちゃんの魅力は素直さだと思います。コロコロと表情が変わるのはもちろんかわいいのですが、一途で一緒にいて飽きなくてエネルギッシュ。ずっと芝居するのは相当大変だと思うんですよ(笑)。瑛二の心を覗きつつもサービス精神で色んな手法をやってくれる凛ちゃんは本当に優しいですね。
 あと、早見さんだから凛ちゃんの魅力を引き出せています。根本的にお芝居が上手ではないと厳しい役ですし。憑依型過ぎても出来ないし、(演技の)説得力なども持ち合わせてないとなので、他の方なら務まらないかもしれません。本質的に難しいので「さすが早見先生」とつーちゃん役の遊佐浩二さんとも話していました。

早見:ありがとうございます。瑛二先輩の魅力は、どっしりとしているところです。瑛二先輩は器が広いなと、岡本さんのお声がついてからより感じました。
 目の前で突如七変化を見せる凛ちゃんと四六時中一緒にいて、ずっと変化に反応して、日常の一部として共に生活してくれています。困った時は助けてくれて、大事な言葉も無意識に言ってくれるし、器の大きい高校生だなと思います。
 もちろん照れている時や格好つけている時は学生の等身大な姿ですが、根本的にどっしりしているなと掛け合っていて感じました。

――お互いの声の感想もありましたが、改めて聞いてみていかがですか?

岡本:言われてみれば、瑛二は受け入れる吸収力あるなと思いますね。部長とつーちゃんに対しては急に棘が出る時もありますが、その棘を好きな凛ちゃんには見せていないですね。部長は違う意味でどっしりしていますが(笑)。

早見:部長は高校生ではないような見た目で(笑)。

岡本:声が諏訪部(順一)さんだし、達観していて同い年だと思わなかったですね(笑)。

早見:すごい大人ですね。

――先ほどから早見さんは岡本さんにずっと褒められていますが。

早見:恐れ多いですよ。毎週考えたり、「どうしよう……胃が痛い〜」と緊張していました。なので、先ほども話していましたが、リハーサルのチェックに時間かかるのはすごく分かります。

“演技が上手”という芝居の説得力を持つ早見さん

岡本:色々お話させていただきました。舞台で上手な演技をする凛ちゃんを見て部長たちが驚くシーンがありますが、「演技が上手な説得力を出すのは難しいですよね」と遊佐さんたちと話しました。演技が上手くないといけないのが前提なので、早見さんすごいなと思いながら見ていました。
 掛け合う新人役の方も新人声優だからこそ、生感が出ていて絶妙なバランスを保ったシーンになったかなと思います。より凛ちゃんが凄まじく上手に見えますし、新人の今しかできないお芝居があって、キャスティングの良さを感じていました。

早見:そのシーン難しいんですよ。全て集まってひとつの作品を作っているんだなと感じました。
 印象的だったことがありまして、台本の話なのですが、凛ちゃんが変な飲み物を飲むシーンでは、これまで見たことのない文字の書き方をされていました。言葉にならない言葉「◯△◇〜〜」みたいな、あの部分をどう印刷したんだろうと思う不思議な文字で(笑)。

岡本:あれはなんだろう?(笑)

早見:手書きで書いてありました。そこに注力している遊び心がすごく面白くて、私も気合い入れて美味しくないリアクションをしました(笑)。

岡本:実は不思議な現場なんですよ。音響監督の佐藤卓哉さんは、元々監督をしていた方なので、ダブルで監督がいる感じで少し不思議な座組でした。

――それによる変化はありました?

岡本:個人的には、佐藤さんは監督の意見を踏襲しようと悩みながら制作していた印象でしたね。

――では、読者の方へ向けて、漫画やアニメの見どころなどメッセージをお願いします。

早見:アニメ化が決定して、とても楽しく凛ちゃんのアフレコをさせていただいてます。改めて原作を読むと、温かい空気がアニメにそのまま乗っていて、優しくてかわいらしくて楽しい映像になっています。

あと、コメディ面は音がつくと面白くなります。個人的には瑛二先輩がツッコむ際に、岡本さんの声が勢いあり収録している時から楽しかったです。そんなコメディ部分も注目していただけたらと思います。

岡本:アニメ化おめでとうございます。そしてありがとうございます。皆さんも初めて見る空気感を味わうことになるかと思います。凛ちゃんと瑛二のイチャイチャを見せつけられる展開にムズムズしてもらいつつ、コミカルな面もお楽しみください。あるようでなかった、新しいアニメの会話劇ですので、毎回見ていただきたく思います。

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